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小惑星カリクローの二重リング

小惑星カリクローは、木星と海王星の間に位置するケンタウルス族と呼ばれる小天体の中で最大のものです。2014年、背景の星を隠す現象を観察する掩蔽観測によってカリクローの周囲に2本の環が発見されました。カリクローの環も土星の環と同様に、氷や岩石の粒子で形作られていると考えられています。このシミュレーションは天体の環全体を、実際に考えられるサイズの粒子で計算した結果です。このような計算は土星などの環では行われておらず、世界初の試みとなりました。コンピュータが描き出したカリクローの環の姿は、まるでさざ波が立つ川面のようでした。

シーン解説
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小惑星カリクローと、それを取り巻く2重の環の全体像です。カリクロー本体の大きさは平均半径でおよそ125 km程度、それに対し2重環の半径は平均半径約400kmと考えられています。

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2本の環に近づいて見たところです。掩蔽観測から、外側の環は粒子がまばらに存在し、内側の環は粒子がより密に分布することが示唆されています。このシミュレーションでは、粒子の大きさを先行研究から推定されている数メートル程度の大きさとして仮定しました。

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外側の環へのクローズアップです。環の粒子が一様に分布するのではなく、所々に粒子がお互いの重力で集まっている部分を見てとることができます。

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環の粒子がより密に存在していると考えられている内側の環では、環が回転する方向に対して斜めに伸びる波のような複雑な模様ができていることがわかります。これが「自己重力ウェイク構造」です。この構造は、土星の環にも存在していると考えられています。

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このシミュレーション結果から、環にはウェイク構造が発生している可能性が高いことがわかりましたが、ウェイク構造があることで環はすぐに壊れてしまうことも明らかとなりました。環が存在し続けるには、環の粒子サイズが推測されているよりも小さいか、未発見の衛星が存在している必要があると研究者らは考えています。

数値計算詳細
計算目的小惑星カリクローの環の構造の解明
計算モデル粒子間衝突を考慮した重力多体シミュレーション
計算に使用した粒子数:最大約3億4500万体
使用した計算機Cray XC30「アテルイ」
現象の時間スケール< 数時間〜数日
現象の空間スケール< 数百メートル〜数百キロメートル
数値計算を行った人道越秀吾(京都女子大学、計算実行時は筑波大学)、小久保英一郎(国立天文台)
参考文献Michikoshi, S. Kokubo, E., 2017, ApJ, 837, 13L
映像化詳細

本映像はゲームエンジンの「Unity」を用いて可視化・映像化されました。
環を構成する粒子は白い球として表示し、小惑星カリクロー本体は実際の観測に基づいた色味・形状としています。ただし、カリクロー本体はまだ詳細には観測されていないため、細かい部分の表現については想像図となります。
映像は360度立体視映像として作成しているため、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)で見ることも可能です。

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関連リンク
映像クレジット

シミュレーション:道越秀吾、小久保英一郎
可視化:中山弘敬
国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

リリース情報

2019.1 バージョン1.0 公開

個人や学校教育での利用は自由です。クレジットの明記をお願いします。
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