この映像では、宇宙初期から現在に至るまでの宇宙の構造形成を、ダークマターの分布の進化に注目して映像化しました。宇宙の構造形成は、はじめに微小なダークマターの密度揺らぎが重力崩壊し、小さいダークマターの塊 (ダークマターハロー)が形成します。そしてそれらが合体してより大きなハローへと進化し、その中でガスが集まって銀河が誕生します。 そして銀河の集団である銀河団が形成し、さらにそれらは網目状に分布する銀河でつながっています。これを宇宙の大規模構造といいます。
この映像は ν2GC (New Numerical Galaxy Catalog) と名付けられた一連のシミュレーションの一つを可視化したものです。宇宙初期のダークマター密度揺らぎを約86億の粒子で表現し、重力相互作用による現在までの進化を追いました。ダークマターの分布の上で、星や銀河の材料となる物質(バリオン)の進化を準解析的に計算することで、銀河や活動銀河核の分布、進化、統計的性質をこれまでにない広い領域で予測できるようになり、今後の広視野観測と比較できるようになりました。
前作「ダークマターハローの形成・進化」は、この計算で見られるようなダークマターハローの一つに注目して、その進化を追ったものです。
宇宙初期にはほとんど一様にダークマターが存在していましたが、わずかな密度のゆらぎがありました。周囲よりも少しでも濃いところは重力が強いために、周りからダークマターをひきつけてますます濃くなり、塊(ハロー)を形成します。初期のダークマターの分布はPlanck衛星によってもたらされた、最新の観測結果に基づいています。
小さなダークマターハローがいくつも形成されています。ハローは繰り返し合体、成長していきます。この計算はダークマターの進化のみを計算したものです。実際の宇宙では大きく成長したハローの中ではその重力によって水素やヘリウムといった星の材料になる物質も濃く集まり、初代星や銀河が生まれます。
現在の宇宙まで成長した様子です。無数の銀河や銀河団サイズのハロー、そして大規模構造が形成されています。ここで時間を止めて大規模構造の中を巡って、その構造をみてみましょう。
ハローの集団同士を結ぶ網目状の構造が見えます。これを「宇宙の大規模構造」と呼んでいます。
このダークマターハローは、太陽の500兆倍ほどの重さに成長したもので、銀河団に相当するものです。ハローの周りに漂うより小さいダークマターの塊はサブハローと呼ばれ、銀河団を構成する銀河を宿していると考えられています。
計算目的 | 標準的宇宙論モデルにおける、ダークマター、銀河、活動銀河核の分布、進化、統計的性質の解明 |
計算モデル | LCDM 計算に使用した粒子数:20483(約86億) |
使用した計算機 | Cray XC30 アテルイ (CfCA, NAOJ) |
現象の時間スケール | ~138億年 |
現象の空間スケール | 約210Mpc |
数値計算を行った人 | 石山智明(千葉大学、計算実行時は筑波大学) |
参考 Reference | “The ν2GC Simulations : Quantifying the Dark Side of the Universe in the Planck Cosmology”, Ishiyama, T., Enoki, M., Kobayashi, M.A.R., Makiya, R., Nagashima, M., Oogi, T. arXiv:1412:2860, accepted by Publications of the Astronomical Society of Japan The ν2GC Simulations |
ここで映像化した計算結果は、文部科学省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」および計算基礎科学連携拠点の元で実施したものです。
この映像では、粒子数をシミュレーションで用いられた86億体から、9000万体まで間引いて描画しています。
この映像のドームマスター(魚眼映像)では、ほぼ全方向で立体視できる手法を使って映像の制作を行いました。映像の制作はMayaを用いておこなっています。
また、360度パノラマ映像の制作も同時に行っています。パノラマ映像は専用のプレイヤーやヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使用することで、より臨場感を味わうことができます。
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