宇宙の構造形成は、まずはじめに微小なダークマターの密度揺らぎが重力崩壊し、小さいダークマターの塊 (ダークマターハロー)が形成します。そしてそれらが合体してより大きなハローへと進化し、その中でガスが集まって銀河が形成します。 このシミュレーションでは宇宙初期のダークマター密度揺らぎを40億の粒子で表現し、重力相互作用によって現在までにどのように進化するかを追いました。映像はそのうち一つの銀河団サイズのハローの形成・進化過程を描き出しています。
この計算で初めてサブハロー(ハローの周りに漂うより小さいダークマターの塊)の個数はハロー毎に大きな違いがあることが明らかになり、そしてそれはハローの形成史と密接に関係していることがわかりました。
最初にほとんど一様にダークマターが存在しています。周囲よりも少しでも濃いところは重力が強いために、周りからダークマターをひきつけてますます濃くなります。
小さなダークマターハローがいくつも形成されています。ハローの群れの中ではハローが合体成長をしています。やがてある程度大きくなったハローがいくつも生まれてゆきます。
この計算はダークマターの進化のみを計算したものです。実際の宇宙では大きく成長したハローの中ではその重力によって水素やヘリウムといった星の材料になる物質も濃く集まり、銀河が生まれます。
成長したハロー同士が、さらに合体して大きなハローを形成します。
大きく成長したハローの周囲を巡って、その構造をみてみましょう。
このダークマターハローは、太陽の1014倍ほどの重さに成長したもので、小さめの銀河団に相当するものです。
計算目的 | ダークマターハローの形成・進化過程の解明 |
計算モデル | LCDM 計算に使用した粒子数:16003(約40億) |
使用した計算機 | Cray-XT4 (CfCA, NAOJ) |
現象の時間スケール | ~137億年 |
現象の空間スケール | 〜50Mpc(映像はそのうち数Mpc分) |
数値計算を行った人 | 石山智明(筑波大学) |
参考 Reference | Variation of the Subhalo Abundance in Dark Matter Halos Ishiyama, T., Fukushige, T., Makino, J. 2009, ApJ, 696, 2115 |
行なわれた計算は、約40億の粒子を用いた非常に大規模なものです。映像化には、成長したダークマターハロー1つに着目して、2億5千万個分の粒子データを用いています。 この映像は立体視用とドームマスター(魚眼)の提供が可能です。 (ドームマスター版は、シーン内のカメラワークが通常版と異なります)