月周回衛星「かぐや(SELENE)」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2007年9月14日に打ち上げた月探査機です。この計画の主な目的は、月の起源と進化の解明のための科学データを取得することと、月周回軌道への投入や軌道姿勢制御技術の実証を行うことでした。本映像は、「かぐや」に搭載されていた14種類のミッション機器のうち、レーザ高度計(LALT)と地形カメラ(TC)のデータを用いて作成されました。
レーザ高度計は、主衛星から発射されたレーザ光が月面に反射して戻るまでの往復時間を計測することで、衛星と月面間の距離を求める装置です。主衛星は月を極軌道で周回しているため、従来の衛星で探査されていない極域(緯度75度以上)を含む、月全面の高精度地形図を世界で初めて作成しました。データの処理・解析はRISE月惑星探査プロジェクトのメンバーが行いました。
地形カメラは衛星の斜め前方と斜め後方を撮影する、2台の一次元可視域波長帯カメラから構成されており、月表面を立体視観測する装置です。最大で解像度10メートルという、非常に高い精度で月表面の地形などの詳細な観測を行ってきました。データの処理・解析はLISM/TC機器チームのメンバーが行いました。
アバンタイトルは、レーザ高度計のデータを基に作成しています。
何も表示されていない空間に、標高が最も低い地点から最も高い地点にかけて、徐々に表示していきます。
月の表側南半球に位置するティコクレーター上空のフライスルーです。直径が約85kmのクレーターの中央には、岩盤が盛り上がって形成された中央丘が存在します。
地形カメラのデータを基に作成しています。
月の全体像を見ながら、ティコクレーターからモスクワの海まで移動するシーンです。主な月の地名や最高地点、最低地点が表示されています。
レーザ高度計のデータを基に作成しています。
月の裏側北半球に位置している、モスクワの海の上をフライスルーします。モスクワの海は地球からは観測出来ず、1959年にソ連の無人月探査機であるルナ3号によって発見されました。
地形カメラのデータを基に作成しています。
アポロ計画によって、人類は初めて月に降り立ちました。このシーンでは、アポロ17号によって月面着陸が行われた際に撮影された写真と、「かぐや」が捉えた地形がぴったりと重なることを示します。
ブルーのグリッドがかぐやの地形カメラによって得られた地形データです。
映像の最後には、月面に今でも放置されたままになっている月面車が登場します。 ただし、この月面車に関してはかぐやによって得られたものではなく、コンピュータグラフィックスで再現したものです。
“KAGUYA’s Moon” Exploring the Lunar Surface アナグリフ立体版。
RC(赤・シアン)フィルタを使った立体視用の色眼鏡を使うと、立体映像を楽しむことができます。
基本データ | 2007年9月14日打ち上げ 主衛星と2機の子衛星で構成される 14種類のミッション機器を搭載 主衛星は高度100km、約2時間で月を一周する軌道で観測 2009年6月11日に月の表側に制御落下 |
参考 | 宇宙航空研究開発機構 (JAXA) かぐや (SELENE) プロジェクト |
本映像は、「かぐや」に搭載されたレーザ高度計(LALT)および地形カメラ(TC)の観測によって得られたデータを基に作成されました。データの可視化・映像化には、市販の3DCGソフトウェアであるMayaを用いています。
映像はFull HD サイズで作成し、立体上映も可能なように立体視版も用意してあります。また、ドームマスター素材(3K、9分20秒)も用意してあるため、プラネタリウムなどでの上映も可能です。