現在の宇宙に数多く存在する渦巻銀河は、数千億の星々と豊富な星間ガスから成る直径10万光年程度の銀河円盤、そしてそれを取り囲むように広がる未だに正体不明なダークマターから成ると考えられています。ここでは,渦巻銀河のダイナミクスに焦点を置いた最新のシミュレーションのムービーを紹介します。
現在のスーパーコンピューターでは、数千億という膨大な星の運動を解くことは未だ不可能です。ここで映像化した計算では重力多体計算専用のスーパーコンピュータGRAPE7を用いて、4百万個の粒子で星とガスを表現しています。この分解能では数千個の星々が一つの粒子に相当します。
銀河円盤内から銀河中心方向を見ています。地球から見た天の川のように見えています。
銀河円盤を斜め上から見ています。銀河円盤表面に渦巻き腕が確認できます。 ガスの濃い領域が背後の星の光を遮って、複雑な模様を形づくっています。
重力不安定によって、銀河円盤に密度の疎密構造がうまれ、それが銀河の差動回転によって引き伸されることで、渦巻き構造が複雑に変化します。この映像では1秒が約200万年に相当します。
ガスを濃く着色して、ガスの運動に注目してみます。各所で超新星爆発(星の死)が起きて、その爆発のエネルギーで周囲のガスが高温に加熱されます。高温のガスを赤く表示しています。
渦巻き腕の領域には、星間ガスが集まり圧縮されることで、高密度ガスの領域が形成されます。そのような高密度のガスからは、やがて新しい星が生み出されていきます。こうした濃いガス雲が、背後の星の光を遮って、複雑な模様を作ります。
このような複雑な渦巻き銀河のダイナミクスは、高分解能なコンピュータシミュレーションによって、初めて再現されました。
計算目的 | |
計算モデル | 計算手法:重力計算(TREE-GRAPE法)、ガス相互作用(SPH法)、放射冷却、星間紫外線による加熱、星形成、超新星爆発 計算に使用した粒子数:バリオン 4×106個、ダークマターは外場として導入。 |
使用した計算機 | 「天の川創成プロジェクト GRAPE-7クラスタ」及び「Cray XT4」 |
現象の時間スケール | ~10億年 |
現象の空間スケール | ~50万光年 |
数値計算を行った人 | 馬場淳一(国立天文台) |
参考 Reference | Baba et al. ApJ, 706, pp. 471-481 (2009). |
このシミュレーションは、星をあらわす粒子とガスをあらわす粒子の運動を解いているものです。ガスを強調しているシーン以外では、ガスは黒く表示して星の光を吸収するようにして映像化しています。