「ようこう」は、1991年に宇宙科学研究所の第14号科学衛星として打ち上げられた太陽観測衛星です。打ち上げ以前はSOLAR-Aと呼ばれていましたが、その後一般公募により「ようこう」と名づけられました。
「ようこう」の目的はX線やγ線といった波長で太陽を観測することで、太陽コロナや、太陽フレアといったさまざまな高エネルギー現象を観測することにありました。X線やγ線は地球の大気によって吸収されるために、こうした現象は観測機を宇宙へ打ち上げることによって初めて詳しく観測することができます。長期間にわたる太陽コロナの全体像は、「ようこう」によって初めて明らかになりました。 コロナが激しく変動する様子は、それまでの「静かな太陽コロナ像」を一新する劇的な大発見となりました。
2006年には新たな太陽観測衛星SOLAR-Bが打ち上がり、「ひので」と名づけられ観測が始まりました。「ひので」は「ようこう」に比べて格段に向上した性能を持ち、さらに詳細な観測データが数多く収集されています。 今後「ひので」の観測をもとに、さらなる太陽活動の理解がすすむことが期待されます。
1995年の太陽活動(1-6月)
X線で見た1995年の太陽活動です。X線で明るくみえる部分は活動領域といわれ、その名の通りいろいろな現象が活発に起こる領域です。活動領域は、我々の目で見える光(可視光)では、黒点となって現れます。
太陽活動にはおよそ11年の周期があることが知られており、1995年は活動が弱い極小期にあたります。 2000年の太陽活動に比べて、活動領域の数が少ないことが確認できます。
2000年の太陽活動(1-6月)
X線で見た2000年の太陽活動です。ほぼ太陽活動の極大期にあたり、多くの活動領域が見られます。太陽面に見られる細かいループ状の構造は、磁力線を反映しています。太陽の現象を理解するためには、磁力線を映し出すループ構造を細かく観測することが極めて重要です。
1995年の太陽活動(1-6月)青版
X線観測で使われているX線は、人間の目では見ることのできない波長です。観測データには人間の目でどのように見えるかという意味での「色」の情報はありません。そのため、擬似カラーでコントラストをつけています。
一般に人は青系統の色の方がコントラストを強く認識するため、このように青く着色することがあります。
2000年の太陽活動(1-6月)青版
画像上で黒く抜けている領域はX線が弱く、「コロナホール」と呼ばれます。コロナホールは、高速の太陽風の吹き出し口と考えられていています。
1995年の太陽活動(1-6月) アナグリフ立体視版
一台の観測機からの観測では、立体構造はなかなか得ることができません。これは太陽がほぼ27日で一周する自転をしていることを利用して、擬似的に視差をつけた立体映像です。 RC(赤・シアン)フィルタを使った立体視用の色眼鏡を使うと、太陽活動を擬似的な立体で見ることができます。
2000年の太陽活動(1-6月)アナグリフ立体視版
同様の方法で作った2000年の太陽活動の擬似的な立体映像です。右目用の映像と左目用の映像には約半日ほどの時間差があるために、速い現象などは正しく立体視することは出来ませんが、ゆっくりとした現象はある程度正しく立体で見ることができます
基本データ | 1991年8月30日打ち上げ。 高度500-800kmで97分で地球一周する軌道で観測。 2005年9月12日に大気圏突入。 軟X線望遠鏡、硬X線望遠鏡、ブラッグ分光器、広帯域スペクルトル計の4つの観測機器を持つ。 |
参考 | ようこうに関連する論文のリストはJAXAの運用する Yohkoh Home Page などからたどることができます。 |
ようこうによる観測データを動画化する際に、観測データが足りないフレームでは、前後の観測データから補間をして動画化しています。そのため各フレームの画像は必ずしも観測されたデータそのものではないことに留意してください。(時折動きがやや不自然に止まったように見える部分は、補間で作られたフレームです)
ようこうの観測データは国内外の関係機関数箇所で公開されています。今回、Yohkoh legacy data archiveで公開されているデータの利用と加工映像の公開の許可を得て映像化を行いました。