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図

渦巻銀河の形成

銀河はどうして形成されたのでしょうか。幾つかの学説が考えられていますが、ここでは銀河が周辺の小銀河を集めて成長して行くという説に基づいた、数値計算を紹介します。

シーン解説
図1

はじめは殆ど一様だった宇宙ですが、密度に僅かな揺らぎから存在したことによって、やがて重力により暗黒物質が集まっていきます。その重力に引かれて水素やヘリウムなどのガスの濃く集まった領域が形成されます。(参考:宇宙の大規模構造ムービー) ここではガスは青で表現し、暗黒物質は表示していません。

図2

ガスの雲の中では、特にガスの濃く集まった部分から、小さな星の集団が幾つも生まれています。数千万年を1秒に縮めて見ているので、星の集団がまるで虫の群れのように飛び交っているような印象の映像になっています。

図3

早い段階で形成された星の集団が次々に合体して、バルジと呼ばれる銀河の中心に位置する丸い星の系を形成していきます。

図4

不均一な物質分布があると、互いに重力で引っ張り合うことにより回転する力を受けます。回転の勢い(角運動量)が保存されながらガスが集まってゆくと、銀河中心に落ち込んだガスの回転速度が大きくなり円盤を形成します。その中で星が生まれ、円盤状の銀河となります。
銀河の近くを星の集団(矮小銀河)が通る時に、その重力の影響で星の分布が波立って、渦巻状の構造が生まれているのが見えます。

図5

真横から見ると、薄い円盤状をしているのが分かります。

図6

この計算で出来上がった銀河の全体像です。

数値計算詳細
基本となるモデルStandard Cold Dark Matter Model
計算目的銀河形成過程の解明/銀河と銀河中心/サブストラクチャの共成長
計算モデル計算手法:重力計算(TREE-GRAPE法)、ガス相互作用(SPH法)、放射冷却、星形成
計算に使用した粒子数:ダークマター 1×106, バリオン 1×106
初期条件:SCDM
使用した計算機GRAPE-5
現象の時間スケール~135億年
現象の空間スケール~30万光年
数値計算を行った人斎藤貴之(国立天文台)
参考 ReferenceCoevolution of Galactic Cores and Spiral Galaxies, T. Saitoh, and K. Wada, ApJL, 615, L93-L96.
映像化詳細

このシミュレーションは、星をあらわす粒子、ガスをあらわす粒子、ダークマターをあらわす粒子の3種類の粒子の運動を解いているものです。ここでは、星をあらわす粒子、ガスをあらわす粒子の2種類を表示して映像化しています。
銀河の星の数は一千億ほどであるのに対し、この計算では10万個程度の星をあらわす粒子を使った計算ですので、一つ一つの粒子は実際には100万個もの星を代表しているに過ぎず、いまだに充分な解像度を持っているとはいえません。
現在、より多くの粒子を用いた高解像度な計算が行われはじめています。

映像クレジット

シミュレーション:斎藤貴之
可視化:武田隆顕
国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト

リリース情報

現在公開している映像は、渦巻銀河の形成 Ver2.0です。 映像化の技法が更新されたり、新しいシミュレーションの結果などを映像化して公開するときには、随時バージョンを上げていく予定です。

2005.10 バージョン2.0(青版) 公開
2007.7 バージョン3.0 公開

個人や学校教育での利用は自由です。クレジットの明記をお願いします。
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