太陽よりも8倍重たい星はその一生の最後に超新星爆発と呼ばれる大爆発を起こすことが知られています。その爆発の仕組みは未だ解決されない天文学の大問題です。 問題解明には爆発の瞬間に発生するニュートリノの影響を含んだ超高詳細三次元シミュレーションが必要です。今回、京コンピューターを用いることでこの超新星爆発のシミュレーションが可能になり、その爆心地の様子が再現されました。
赤色巨星の内部は、元素ごとに層状の構造をしており、星は内部の核融合の圧力と自身の重力が釣り合って形を保っています。 超新星爆発はその最深部の鉄のコアから引き起こされます。
星の中で核融合が弱まると、自身の重力を支えきれなくなり、まわりから降り積もる物質によって鉄のコアは押しつぶされて中心に向かって収縮していきます(重力崩壊)。 この収縮は中心に重くて固い中性子星が生まれるまで続きます。
中性子星が生まれた瞬間に物質は跳ね返り、丸い衝撃波(定在膠着衝撃波)が生まれます。 同時に中性子星からニュートリノの放射が始まり、熱が逃げて冷却されます。 しかし衝撃波付近ではニュートリノがまわりの物質と反応し加熱が起きます。 青色はニュートリノにより冷却されている所、赤色は加熱されている所です。
衝撃波は外側から落ちてくる物質によって押さえつけられていますが、 複雑な対流運動によりその形はくずれ、そしてニュートリノによる加熱をさらに促します。 こうしてエネルギーを得た衝撃波は徐々に星の外側へ成長していきます(定在降着衝撃波不安定性:Standing Accreion Shock Instability=SASI)。
複雑な対流の様子をできたての中性子星の上に立ってみるとこのようになります。 これは京コンピューターで詳細な構造を計算し、初めて明らかになった3次元的な対流の様子を可視化しています。
参考: 京コンピューターについての詳しい情報はこちらでご覧いただけます。
このようにして、鉄のコアが収縮し、中性子星が出来た際に生じる衝撃波はニュートリノによりエネルギーを与えられ、SASIに助けられながら外に進んでいきます。 最終的には中性子星のまわり全体を吹き飛ばす超新星爆発となります。
岐阜県神岡にあるスーパーカミオカンデには地下室の巨大な純水プールの壁にニュートリノの検出器(光電子増倍管)が並んでいます。 超新星爆発によって生まれたニュートリノはここで水と反応し、チェレンコフ光を出します。壁の検出器はこの光をとらえます。
計算目的 | 超新星爆発のニュートリノ加熱機構の解明 |
計算モデル | 計算手法:ニュートリノの輻射輸送、流体シミュレーション 計算に使用したグリッド数:320x64x128、ニュートリノエネルギー20段階 |
現象の時間スケール | ~0.5秒 |
現象の空間スケール | ~5000キロメートル |
数値計算を行った人 | 滝脇知也(国立天文台)固武慶(国立天文台)諏訪雄大(京都大) |
参考 | Title: Three-dimensional Hydrodynamic Core-collapse Supernova Simulations for an 11 M_s Star with Spectral Neutrino Transport Takiwaki, Tomoya; Kotake, Kei; Suwa, Yudai The Astrophysical Journal, Volume 749, Issue 2, article id. 98 (2012). |
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