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渦巻銀河の形成(ver.3)

銀河は一体どのようにして形成されたのでしょうか?ここでは、現在主流となっている、小さな銀河が最初に出来てそれらが合体して大きな銀河になるという、階層的構造形成シナリオに基づく銀河の形成過程のコンピュータシミュレーションを紹介します。

シーン解説
図1

始めはほとんど一様だった宇宙ですが、僅かな密度の揺らぎが存在したことにより、やがて重力により引かれ合い、天体を作ってゆきます。最初に宇宙の物質質量の大きな割合を占める暗黒物質が集まり、そしてその暗黒物質の重力に引かれて水素やヘリウムなどの通常の物質が集まっていきます。(参考:宇宙の大規模構造ムービー) ここではガスは青色で表現し、暗黒物質は表示していません。

図2

黄色い点で表された星は、ガスの濃い部分から生まれます。このムービーの1秒は、数千万年に対応します。

図3

あちこちでできた小さな銀河が合体して、大きな銀河を作ってゆきます。このとき星だけでなくガスも集まってきます。そしてやがて、ガスは円盤を作り、さらにその中でも星が生まれてゆきます。

図4

小さな銀河が円盤のそばを通過すると、そのとき重力の影響で円盤の中に渦巻き状の構造が生まれるのが見えます。

図5

真横から見ると、薄い円盤状をしているのが分かります。

図6

この計算で出来上がった銀河の全体像です。

数値計算詳細
基本となるモデルStandard Cold Dark Matter Model
計算目的銀河形成過程の解明/銀河と銀河中心および銀河中心超巨大ブラックホールの共成長/球状星団の起源
計算モデル計算手法:重力計算(TREE-GRAPE法)、ガス相互作用(SPH法)、放射冷却、星形成
計算に使用した粒子数:ダークマター 1×106個, バリオン 1×106
初期条件:SCDM
使用した計算機GRAPE-5
現象の時間スケール~135億年
現象の空間スケール~30万光年
数値計算を行った人斎藤貴之(国立天文台)
参考 ReferenceSaitoh & Wada, 2004, ApJ, 615, L93.
Kawakatu, Saitoh & Wada, 2005, ApJ, 628, 129.
Saitoh, Koda, Okamoto, Wada & Habe, 2006, ApJ, 640, 22.
映像化詳細

このシミュレーションは、星をあらわす粒子、ガスをあらわす粒子、ダークマターをあらわす粒子の3種類の粒子の運動を解いているものです。ここでは、星をあらわす粒子、ガスをあらわす粒子の2種類を表示して映像化しています。
銀河の星の数は一千億ほどであるのに対し、この計算では100万個程度の星をあらわす粒子を使った計算ですので、一つ一つの粒子は実際には10万個もの星を代表しているに過ぎず、いまだに充分な解像度を持っているとはいえません。
将来、より多くの粒子を用いた高解像度な計算によって、更に詳細な銀河形成のシナリオが明らかになってゆくでしょう。

SIGGRAPH上映バージョンのクレジット

ストリーミングで公開している映像は、 SIGGRAPH2007 Electronic Theater における上映のために編集し、音楽および英語ナレーションをつけたものです。このバージョンのクレジットは以下の通りです(所属は制作当時のものです)。

  • シミュレーション:斎藤貴之(国立天文台)
  • 可視化:武田隆顕(国立天文台)・額谷宙彦(理化学研究所)
  • 可視化プログラミング:武田隆顕(国立天文台)・高幣俊之(理化学研究所)
  • 脚本:小久保英一郎・Catherine Ishida(国立天文台)・Caroline Collins Petersen (Loch Ness Productions)
  • ナレーション:Catherine Ishida(国立天文台)
  • 録音:山本雅行・波田野宏之(エス・シー・アライアンス)
  • 作曲:宮木朝子
  • プロデュース:小久保英一郎・観山正見(国立天文台)
リリース情報・ニュース

2007.7. ver.3.0をWWW上で公開しました。ストリーミング配信版、およびDL用無音版をそれぞれ公開しました。
2007.5. アメリカコンピュータ学会の分科会SIGGRAPH2007において、Electronic Theaterに入選しました。

個人や学校教育での利用は自由です。クレジットの明記をお願いします。
博物館等での展示・上映および、映像番組・出版物などでの利用は事前の申請が必要です。
詳しくは利用規程をご覧ください。

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