cD銀河の形成
銀河団の中心には、cD銀河と呼ばれる巨大な楕円銀河が存在することがあります。cD銀河は、質量が通常の銀河よりも10倍ほども大きく、普通の楕円銀河よりも広がった構造をしている銀河です。有名なものとして、おとめ座銀河団の中心にあるM87などがあります。
こうしたcD銀河の起源について有力な説として、銀河団内での銀河の衝突合体によって生まれたという説があります。
この説に基づいて行われた、1000個以上の銀河の密集した領域で数多くの銀河の合体によりcD銀河形成が成長してゆく過程のシミュレーションを紹介します。
![]() | 計算の初期状態です。数多くの銀河を配置して、銀河の密集した銀河団を表現しています。 銀河団のような大きなスケールの天体の運動には、ダークマターによる重力の効果が非常に重要になります。 本来ダークマターを見ることはできませんが、ここではダークマターを薄い青で表示しています。 |
![]() | さらに中心部に近づいてみました。計算を開始すると、数多くの銀河が銀河団の中心の周囲を運動している様子が分かります。
銀河団は、こうした運動によって銀河がばらばらになろうとする勢いと、ダークマターを含めた自らの重力で引き付けあう力がほぼ釣り合うことで形を保っています。 |
![]() | 中心部分では、銀河同士の衝突や合体が起き、やがて混ざり合って星の大集団が生まれてゆきます。その周囲には、相互作用によって引き伸ばされた銀河などをみることもできます。 |
![]() | 100億年ほど経過した時点で、中心部には巨大な銀河が生まれています。 |
![]() | 最後にカメラを少し遠ざけて全体像を見ています。ここではダークマターの表示をオフにして、星の分布だけを表示しています。 |
320x240, mpeg 形式 4d2ucdgalaxy_320x240.zip ( zip 書庫 : 34MB) |
数値計算の詳細
基本となるモデル | cold dark matter + star |
計算目的 | ダークハローどうしの合体により、その中にある銀河どうしも合体 していき、最終的に、巨大な銀河が形成されていく様子を明らかにすること |
計算モデル | 計算手法:N体計算(ツリーコード) |
計算に使用した粒子数:4192384 | |
初期条件: 1024個の銀河を持つ銀河団をモデル化したものです。 それぞれの銀河は、その約10倍の質量を持つダークハローの中にいます。 ダークハローをつくるダークマターと銀河をつくる星々を、重力相互作用する粒子としてモデル化しています。 | |
使用した計算機 | GRAPE6 |
現象の時間スケール | ~100億年 |
現象の空間スケール | ~1M pc |
数値計算を行った人 | 船渡陽子(東京大学) |
映像化の詳細
この計算では、小銀河一つ一つが、それぞれ1024から数十万個の星粒子で表されています。そのため、一つ一つの粒子は、104-5程度の星の集団を表していることになります。 ここでは、120億年ほどの進化の計算を2分ほどの映像にしているので、1秒で1 億年ほどの時間の経過を表していることになります。 この映像では、星(団)を黄色い光点で表示して、ダークマターを薄い青で表示しています。これらを、全て半透明のポリゴンとして描画しています。
映像クレジット
- シミュレーション:船渡陽子
- 可視化:武田隆顕
- 国立天文台4次元デジタル宇宙プロジェクト
リリース情報
- 2007.12 バージョン1.0 公開
640x480, Windows Media Video 形式
4d2ucdgalaxy_640x480.zip ( zip 書庫 : 81MB)